車の乗り換え時期の平均は、新車から乗り続けている場合で7〜9年と言われています。
新車から数えると3〜4回目の車検時期ですが、実際にはまだまだ長く乗れるパターンが多いです。
そのための注意点や必要となるメンテナンス、乗り換えるときの判断基準について
現役の整備士の私が出来る限り分かりやすく解説します。
車はメンテナンス次第で30年以上乗ることが出来る!
メンテナンス状況や使用環境にもよりますが、
一般的な乗用車でも15年以上乗ることはできます
ただし、そのためのメンテナンスは必要不可欠です。
たとえば、普段からオイル交換の距離を守らない、
車検は安く仕上げてと…
愛車のメンテナンスを疎かにしていると、車が傷んでいくスピードは早く、
良い状態で長く乗り続けることが困難になります。
車の耐用年数自体は、走行距離の多い少ないによる違いは当然のこと
、
それだけではなく普段の保管状況やメンテナンス状況で大きく左右されます。
15年、20年、またはそれ以上長く乗り続けることは可能です。
車を20年以上乗るための注意点
車を20年以上乗り続けるためには、
注意点やあらかじめ覚悟しておかなければいけないことがあります。
交換部品の在庫がない場合がある
長く乗り続けるほど、整備するときに交換部品が発生します。
しかし、車の部品は永久的に生産・販売されません。
20年以上乗り続ける場合には、交換部品が発生した際に、純正部品が無く、
中古部品や社外部品を使用しなければ整備・メンテナンスが困難になる場合があります。
メルカリやヤフオク等で売ってることもありますが、
当然、中古部品や社外部品でも調達ができないパターンも出てきます。
一般的には、その車のモデルの新車生産が終了してから「10〜15年」は、メーカーからの部品供給があると言われています。
これはあくまで各メーカーがそれぞれ定めている自主基準なので、
車種や部品によって異なります
定期的に交換が必要な部品は予め用意しておいてもよいと思います。
税金が高くなる(車検代が高くなる)
車は新車から13年を超えると、年に1度納税している自動車税と
車検時に納税している自動車重量税が重課されます。
13年は新車から数えて6回目の車検のタイミングです。
年数が経過した車は環境負荷が大きくなることから税金を重たくしているのですが、
ハイブリッド車やEV車のような、一般的に環境に配慮しているとされる車は重課の対象外です。
また、自動車重量税は18年経過でさらに重課され、
ディーゼル車の自動車税は11年を超えると重課されます。
自動車にかかる税金は、減税措置や法改正の絡みもあって、
同じ車の同じエンジンでも購入時期によって税額が異なることがあります。
正確な税額は国交省のHPを参考にしたり、販売店や整備工場で確認することをおすすめします。
【例】
2019年10月以前に購入した、2.5Lガソリンエンジンモデルのアルファードの場合(車両重量は2,000kg超え)
<1〜12年>
自動車重量税(税額)41,000円
自動車税(税額)45,000円
<13年〜>自動車重量税(重課率)0.39/自動車税(重課率)0.15
自動車重量税(税額)57,000円
自動車税(税額)51,700円
<18年〜>自動車重量税(重課率)0.53/自動車税(重課率)0.15
自動車重量税(税額)63,000円
自動車税(税額)51,700円
車検代が高くなる理由として、諸経費の重量税が高くなっていることが考えられます。
車検の後の請求書を見比べてみると分かるかと思います!
車検費用が高くなる
車検時に納税する自動車重量税の重課や、
年数経過と走行距離に応じた各部品の劣化による部品交換の発生によって、
車検時の費用が高くなることに注意が必要です。
中には車検に通らないため交換が必須な部品も出てくることもあります。
その場合まだ新しい車の車検と比較して、
数万円〜数十万円単位で車検費用が高くなることもあります。
車に15年20年…と長く乗り続けるのであれば、
車検時の想定外の出費にはある程度の覚悟が必要です。
車を手放すときの査定額は期待しない
ほとんどの車は年数が経過し走行距離が増えるに従って、
下取り・買取金額は右肩下がりです。
15年〜20年経過した車にはほとんど金額がつかないので、
次の車に乗り換える時の頭金や購入資金に充てられるような査定額は出ないものと考えましょう。
値段が上がるのは、生産台数の少ない人気のクラシックカーや一部のスポーツカー
最高級グレードのアルファード、ヴェルファイア、フェラーリ位です。
最近は、誤解を招くような高い買取実績をアピールする広告なども増えているので注意が必要です。
車を20年以上乗る際のメンテナンス
車を20年以上乗るために必要となるメンテナンス・交換部品について解説します。
定期的な油脂類の交換
エンジンオイルに代表されるように、
車にはブレーキフルードやエンジン冷却水(LLC)といった、
定期的に交換が必要な油脂類が使われています。
油脂類は車に乗り続ける限り必ず劣化します。
劣化したままの油脂類を使い続けていると部品の寿命を縮めたり、傷めたりすることにつながります。
20年以上車に乗り続けるためには、
定期的な油脂類の交換という基本なメンテナンスは最低限必要なことです。
定期的に油脂類以外で交換が必要な消耗品の交換

定期的に交換が必要なのは油脂類以外にもあります。
分かりやすいところで言うと以下のようなものです。
- タイヤ
- エアーエレメント
- スパークプラグ
- バッテリー
- その他(エアコンフィルター等…)
油脂類と同じく、定期的な交換が必要なのは劣化や摩耗が進むためです。
よって、交換を怠っていると車の健康維持に支障をきたしたり、余計な整備や部品の損傷を招く恐れがあります。
ゴム製ブーツ類の交換
車にはさまざまな箇所に、ゴムブーツが使われています。
ブーツの中にはグリスが封入され、人間で言うところの関節にあたるようなボールジョイントを保護しています。
こうしたブーツ類は破れていると車検に通らないものも多いです。
走行距離の多い・少ないに関わらずゴム部品は劣化していくので、
20年以上乗るとなると各所、一度は交換する必要が出てくるでしょう。
- タイロッドエンドブーツ
- ロアボールジョイントブーツ
- サスペンションのダストブーツ
- ドライブシャフトブーツなど
ブーツのみの交換ができるものから、部品を丸ごと交換しなければいけないものもあります
エンジン補機類の寿命

補機類には、エアコンコンプレッサーやオルタネーター(発電機)
油圧パワステの車であればパワステポンプ等があります。
こうした補機類も長年使い続けていると寿命を迎えたり、
故障のリスクが高まってくるので、
20万kmを目指すとなると一度は交換の必要が出てくる可能性があります。
予防整備として交換することは少なく、基本的には壊れたら交換する部品です。
サスペンションのガタやへたり・リフレッシュ
長く乗り続けるためには、サスペンションの交換も重要です。
ダンパーからオイル漏れが発生すると、車検に通らないので交換が必須となりますが、
見た目には分からなくても、サスペンション類は走行距離が増え、年数が経過すると劣化します。
劣化すると乗り心地の悪化や運動性能の低下につながるので、
20万km以上を目指すのであれば、10年/10万kmを目処に、
ダンパーやマウント、アーム類といったサスペンション一式のリフレッシュができるとベストです。
車検の際にはこの辺に関しては検査で必ずチェックされるのでご安心を!
ハイブリット車やEV車のバッテリー
ハイブリットバッテリーやEVバッテリーも
使用過程において劣化するので、20万Kmまでに1度は交換する必要が出てくるでしょう!
充電容量の低下や、場合に寄っては警告灯が点灯するので、それが交換の合図となります。
動けなくなった万が一の場合、
EV車はレッカー運搬の時は費用が高くなる可能性があるので、
メンテナンスは怠らないようにしましょう!
ブレーキ廻りの交換

長く乗るためにはブレーキの整備も大切です。
普段はブレーキパッドのみの交換で対応可能な消耗品の交換も
距離が増えるとディスクローターの摩耗も進むので、摩耗限度に近づいている場合は交換が必要になります。
また、ブレーキ廻りのシール類(ゴム部品)も劣化などによってブレーキフルード漏れが発生するリスクが高まります。
こういった要因により、次のような部品交換や整備が必要になります。
- キャリパーのオーバーホール、または交換
- ホイールシリンダーのオーバーホール、または交換
- ブレーキホースの交換
- ブレーキマスターシリンダーのオーバーホール、または交換
クラッチやタイミングベルトの交換

国産車ではすでに新車として販売されている車でタイミングベルトの車はありませんが、
年式の古い国産車や一部の輸入車ではタイミングベルトという部品がエンジンの駆動のために使われています。
おおよそ10万Km毎の交換が推奨されていますが、ゴム部品なので劣化によりヒビ割れが発生してきます。
使用状況にもよりますが、10年を目安に交換を行うことがベストです。

他にも、最近は数が少なくなりましたが、マニュアルトランスミッションの車や一部のAT車(スズキのAGSなど)に使われているクラッチも消耗品の一つです。
こちらはドライバーの運転技術やシチュエーションによって交換時期が大きく変わりますが、20万Km走行して1度も交換しないということもあります。
長く乗った車を乗り換えるタイミングはいつが良いのか?
長年乗り続けた愛車に半永久的に乗り続けるのは難しいので、
いつかは乗りかえを検討する必要があります。
一度大きな修理を行うと乗り換えるタイミングを逃しやすくなります。
乗り換えを考えるタイミングとしては以下の場合が考えられます。
ボディを含む車体の錆の具合を目安に!

降雪地帯や、海の近い地域では塩害による下廻りやボディの腐食が進みやすくなります。
錆の具合や箇所によっては高額修理や、交換が不可の場合があります。
個人では錆による車の状態を判断するのは難しいので、信頼している整備工場の整備士に確認してもらいましょう!
余談になりますが、中古車などを購入する時は、見た目や内装ばかりに目が行きがちですが、下廻りの錆具合を確認することをおススメします!
乗り換えてすぐ高額修理になるケースは下廻りの錆の具合を見落としているためです。
高額修理が乗り換える判断のポイントに!
多くの場合は、新しい車に乗り換える方が金額が大きくなりますが、
いつまでも乗り続けれるか分からない車の修理に、多くのお金をかけるのはいかがなものでしょうか?
高額の部品を取り換えたばかりなのに、
スグに他の場所が壊れて乗り続けることが不可能になることもあります。
軽自動車やコンパクトカーに1度の修理で20万円以上掛かる修理が発生するようであれば、乗り換えても良いタイミングとなります。
高額修理になりやすいのは以下の通りになります。
- エアコンの修理
- エンジン本体の修理
- 事故による修理
- ハイブリットバッテリーやEVバッテリーの交換
- ヘッドライトの交換
エアコンの場合はコンプレッサーやコンデンサーなどの複数個所が交換になる場合は高額になりやすいです。
エンジンがオーバーヒートしてエンジン本体が歪んだり、エンジンオイルの消費が激しくなったりしていると、エンジンの載せ替えが必要になります。
事故による修理は高額になりやすいです。
事故の度合いによりますが、フレーム修理を含む修理は修理箇所や部品も多く必要になるため高額になりやすいです。
ハイブリッドカーやEV車のバッテリーは高額です。
ハイブリッドカーの駆動用バッテリーの相場は20万~60万前後
EV車のバッテリーの相場はサイズにもよりますが、
100万~300万程度となっています。
技術の進歩によってバッテリーの価格も下がってくる可能性もありますが、
中古車なら1台買える程の金額になります…
ヘッドライトの交換は、ライトが暗くて車検に通らないことがあり得ます。
法改正により年数経過によりくすんだヘッドライトでは、光度が足りないため車検が通らなくなります。
以前は光度が足りない時はハイビームに切り替えて合格であれば良かった年式の車ですが、
ロービームのみの判定になったために、車検に通らない車が増えてきています。
この他にも近年のLED一体型のヘッドライトやテールランプはライトユニット丸ごとの交換になるため、部品代が高額になります。
くすみについてはライト磨きによって解消されることもありますが、
ヒビ割れがあった場合は車検に通らないので、
高額の修理代を払って乗り続けるか検討の余地があるかと思います。
おわりに

車は乗り方や環境によって同じ車種でも、全く同じように壊れることはありません。
長く乗り続けるには、多少の運もありますが日々のメンテナンスが必要不可欠です。
どんなにメンテナンスを行っていても部品や消耗品は必ず劣化します。
突発的な出費に対応出きるように、預貯金を確保しておき返済に困らないようにしておきましょう!